ブロックチェーン:信頼性の
問題

暗号通貨と金融サービスにとどまらない共有型台帳技術

ブロックチェーン技術が現在の過剰な期待に応えるものであれば、すぐにでも新たな変革の波が押し寄せるでしょう。

分散型台帳としてのブロックチェーンは、データの整合性と信頼性を確保する特性を備えており、信頼関係のない当事者間でデジタル取引を行う際の信頼性を保証します。この技術により、大きな可能性が解き放たれます。

よく知られている暗号通貨およびデジタル決済システムであるビットコインは別として、実証済みの大規模なブロックチェーン アプリケーションはまだ黎明期にあります。しかし、この技術の可能性は計り知れません。Gartner は、ブロックチェーンがビジネスにもたらす付加価値は、2025 年には 1,760 億ドル強に達し、2030 年には 3 兆 1,000 億ドルを超えるという驚くべき予測を発表しています1。この付加価値の発生源として、売上増加、新しい販売機会、投入費用や間接費用の削減などが考えられます。

ブロックチェーンに関する今日の議論や予測の大部分は、金融取引や金融サービスの性質を根本的に変える能力に焦点を当てたものです。しかしジュニパーでは、ブロックチェーンがもっと幅広い業界、特にアイデンティティやデータ整合性の分野でも大きな利益をもたらすと確信しています。

透明性を確保しながらセキュリティも確保

ブロックチェーンは透明性を確保する設計となっていますが、本質的にデータの整合性も保証するものです。ブロックチェーンは、ブロックと呼ばれるトランザクション レコードを電子的にリンクさせます。これらのブロックは、各ブロックが前のブロックの情報と暗号化されて結びついているため、改ざんすることはできません。いったんブロックチェーンに組み込まれたデータは変更または削除することはできません。これはデータと監査証跡を保護するための重要な設計上の特性です。

このような保証は、個人情報の漏洩につながるセキュリティ違反の増加や、ニュース、情報、およびドキュメントの信頼性に対する不信感の高まりといった今日の状況における救世主となります。

実際、アイデンティティとデータ整合性は解決すべき重要な問題です。しかし、ブロックチェーンが成功するには、あらゆるアプリケーションと同様、セキュリティが確保された基盤となる通信ネットワーク、信頼性を備えたインフラストラクチャ、エンドツーエンドのクラウド オーケストレーションが欠かせません。ブロックチェーンにアクセスするための秘密鍵が漏洩したり盗まれたりすると、セキュリティ侵害が発生する可能性があります。実際、2011 年には、マウントゴックスのビットコイン取引所への攻撃により、推定 4 億 5,000万 ドルの損害が発生しました。ブロックチェーンはデータの信頼性と整合性を保証しますが、包括的なネットワーク セキュリティが不要になる訳では決してありません。

合意に基づく管理

ブロックチェーンでは、中央集権的なコマンド / コントロールの代わりに、合意形成メカニズムが採用されています。つまり、企業であれ、政府機関であれ、取引の仲介者となる単一のエンティティは存在しません。この合意形成メカニズムによって、ブロックチェーンは、当事者間の信頼性を根本的に高め、複製、照合、および記録管理タスクを減らすことで取引コストを削減します。この技術は、契約という概念を根本的に変え、ピアツーピアでのやり取りを促進し、ギグ エコノミーの基盤を強化します。

ブロックチェーンの仕組みを明らかにするため、まず従来のサプライ チェーンについて考えてみましょう。サプライ チェーンは、さまざまなベンダーやエンティティが資産を移転したり、情報を共有したりするエコシステムです。今日のベンダー エコシステムには信頼性が欠如しており、その結果、複雑で非効率的なインタラクションが蜘蛛の巣のように絡まっています。取引を記録するために各ベンダーが台帳(データベース)を必要としているため、エラー、詐欺、過失などによって各台帳が一致しなくなってしまう可能性があることを考えてみてください。こうした複雑さと非効率性は、医療記録から音楽の著作権、政府の登録データベースまで、あらゆる業界に存在します。

それでは、エコシステム内の全員が確認して更新できるデータベースが 1 つあるとしたらどうでしょうか。そのような仕組みがあれば、多くの非効率性と複雑性が排除されるでしょう。しかし、どうすればそのようなデータベースへのアクセスを制御できるのでしょうか。実際に取引が行われたことをどのように確認すればよいのでしょうか。

入念に設計されたブロックチェーン システムは、単一の分散データベースが持つ合理化の利点を提供すると同時に、一元化されたデータベースが持つアクセスおよび検証の問題を解決します。

ブロックチェーンの動作

ブロックチェーンの可能性はあらゆる産業に及んでいますが、取引におけるデータおよび当事者のアイデンティティと整合性に関連する 2 つの例を見てみましょう。

サプライ チェーン - ブロックチェーンがサプライ チェーンのあらゆるステップで供給元と信頼性を検証して正当性を確保します。ブロックチェーン内に存在するコードで構成されたスマート コントラクトが、取引に関するルールを設定し、当事者間のやりとりを自動化します。

例として、航空機部品の取引を考えてみます。スマート コントラクトを持つブロックチェーンは、部品がサプライ チェーンを通過する際に、その信頼性を検証できます。部品はコンテナ トラックに積まれて製造工場を出発し、近くの港に向かいます。航空機部品が積載されているコンテナは目的の港まで海上輸送され、そこからトラックで配送業者の施設まで運ばれ、さらにそこからトラックで最終目的地(おそらく航空機用の倉庫)に運び込まれます。受け取った部品が本物であって、事故につながりかねない安価な代替品ではないことをどうすれば確認することができるでしょうか。

分散型台帳とスマート コントラクトを使用すれば、プロセスの完全性と、航空機用倉庫に到着する部品の正当性の両方を確認することができます。たとえば、製造工場の出口で部品に追跡番号をレーザーエッチングしてから、その番号をスキャンしてブロックチェーンの最初のエントリーにします。一連の輸送と引き渡しでは、スマート コントラクトが受領したことを確認し、ベンダー間の支払い業務を自動化します。パーツの塗装など、中間的な製造工程が行われるかもしれませんが、これらのイベントもプロセス全体の検証のためにブロックチェーンに追加されます。

モノのインターネット - ブロックチェーンを使用することで、膨大な数の少額取引について契約を結ぶことも経済的に可能となります。その多くは IoT(モノのインターネット)上で行われます。ブロックチェーンは、自律的に相互通信する大量のデバイスの管理を簡単にします。たとえば、上記の航空機部品の輸送用コンテナの数を数千倍にしてみます。あるいは、重要な産業プロセスを監視する何百万個のセンサーを想像してみてください。これらは、IoT によって実現される規模の例であり、既存の管理システムでは対応できないでしょう。

IoT エンドポイントのアイデンティティの承認は、ブロックチェーンが IoT のセキュリティを高めるために価値を付加できるもう 1 つの使用例です。IoT を構成するエンド デバイスまたはエッジ デバイスを保護することは、比較的新しい取り組みです。IoT のセキュリティはまだ進化の途上であり、ハッカーはこれらのデバイスを通じてシステムに侵入することができます。Mirai(マルウェア)などによる最近のセキュリティ侵害は、IoT デバイスから発生しています。各デバイスが最初にブロックチェーンに登録され、合意によって受け入れられていれば、ブロックチェーンはこれらのデバイスを不正行為や不審な通信から保護することができます。ブロックチェーンは、エンド デバイスによって実行される各トランザクションおよび通信を記録します。これにより、デバイスの ID と履歴が透過的で検証可能なものとなります。秘密鍵とブロックチェーン ネットワークからの検証がなければ、ハッカーは膨大な数の IoT デバイスを侵害して DDoS 攻撃を開始することはできません。

将来のカギ

B2B ブロックチェーンの成功は、エコシステム内の個人や企業の協力する意欲にかかっています。そのため、ブロックチェーンの将来を構想する際には、その技術の投資対効果だけでなく、ブロックチェーンの脅威にさらされる強力な既存勢力の影響についても考える必要があります。彼らは変化に抵抗する可能性があります。

セキュリティ問題はこれからも発生し続けるでしょう。ブロックチェーンはアイデンティティの保証とデータ整合性を実現しますが、すべてのセキュリティ問題を解決してくれるわけではありません。ブロックチェーンによって攻撃対象領域が拡大しますし、今後まだ知られていない脆弱性が明らかになるでしょう。アプリケーションを構築する開発者が増えるにつれて、ブロックチェーンを利用しているアプリケーション レイヤーには新しい種類の脆弱性が生じ、ハッカーによって悪用される可能性があります。ブロックチェーン アプリケーションにセキュリティ上のリスクをもたらすバグが見つかった場合、それを修正するのにどれくらい時間がかかるでしょうか。変更には時間と合意が必要であることを忘れないでください。最良の防衛策には、ネットワークのすべての要素が脅威インテリジェンスと修復に関与するような、より包括的なネットワーク セキュリティ戦略に移行することが含まれます。

大きな可能性

ブロックチェーンの可能性は、ほぼすべての業界に及びます。金融機関は、数日ではなく数分で証券を決済することができます。メーカーは、OEM(Original Equipment Manufacturer)や規制当局と生産記録を共有することで、製品のリコールを減らすことができます。モバイル ネットワーク通信事業者は通信記録によってローミング詐欺を防止することができます。通信記録は、ホスト モバイル ネットワークとビジター モバイル ネットワークとの間で実装されたブロックチェーン スマート コンタクトをトリガーします。これにより、あらゆる種類の企業が、処理の速度を高め、リスクを抑制しながら、商品の流れと関連する支払いをより厳密に管理することができます。

このようにブロックチェーンの可能性は非常に高いのですが、それに備えるに当たって、まずはその複雑さについて知ることをお勧めします。次に、現在自社のビジネスの障害となっているものを調べます。ブロックチェーンによって、従来のソリューションではできない方法で問題を解決できるでしょうか。実験は重要なステップです。効果を実証するためにトライアル版の利用も検討してください。

信頼性の回復

政府、企業、消費者のデジタル化が進むにつれて、ネットワーク トラフィックは爆発的に増加し続けています。しかし、ネットワークとデータは絶えず攻撃にさらされており、技術に対する信頼、特にプライバシと情報の信ぴょう性に関して信頼が低下しています。セキュリティが強化されたネットワークと組み合わせることで、ブロックチェーンは、信頼を回復し、インタラクションとエンパワーメントの新しい時代を再び活性化させる技術となりえます。

ブロックチェーンとその可能性の詳細については、この記事のリソースでご確認ください。

1 ソース:Gartner, Inc., 「Forecast: Blockchain Business Value, Worldwide, 2017–2030」、2017 年 3 月